ヤシオマスはニジマスの受精卵を加温処理することで、卵を持たないように改良した栃木県の特産魚。頬紅のようなフワッとした紅色を纏った見た目から想像される通り、その身は鮮やかなサーモンピンク。同じくピンク色が美しい、栃木県の県花であるヤシオツツジにちなんで〈ヤシオマス〉と名付けられました。
ヤシオマスの中でも、7つの基準をクリアしたものだけが〈プレミアムヤシオマス〉というブランド名を冠されます。
プレミアムヤシオマスの歴史は昭和60年代に栃木県の水産試験場が、卵を持たない大型ニジマス「ヤシオマス」を開発したことに始まります。ニジマスは、通常大きく成熟すると肉質が落ちてきますが、大きくなっても卵を持たないように改良されたのがヤシオマス。栄養が卵ではなく身の方に回るため大きく美味くなるのです。
さらに品質改良の研究は続けられ、研究者はヤシオマスの「脂肪の質」に着目、「オレイン酸」を豊富に含ませる技術を確立していきました。プレミアムヤシオマスのとろけるような柔らかい身質、クセのない上品な美味しさの秘密は、この融点の低い脂肪であるオレイン酸含有量の多さにあります。畜産分野ではイベリコ豚がオレイン酸を多く含むことで知られていますが、魚類では他に例のない「発明」といえるでしょう。
関東平野の北部に位置する栃木県県北には、険しい山々が連なり、その麓には清冷な水が流れています。プレミアムヤシオマスは、その豊富な水量のもと、冬場には凍てつくような厳しい環境で2〜3年かけてじっくりと育てられ、そのうち一定期間は特別に仕立てた餌で飼育されます。作り手は日々、美味しさを追求し、ブランドへの矜持をもって、一尾一尾大切に育てております。
研究者、作り手の思いの詰まった他のサーモン類にはない特別な美味しさを、感謝を持ってゆっくり味わいたい…そんな気持ちにしてくれる魚です。味わいの中に、栃木の雄大な自然、ヤシオツツジのピンク色が見えるようです。