銀白色に輝くシュッとした優美なフォルム…それは、春の高級魚〈サヨリ〉。透明感のある白身であるが、お腹を開くと黒いため「腹黒さより」などと悪口を言われることもある。きっと誰かがその美しさに嫉妬してそんな風に言ったのでしょう。美しい見た目に違わず、味も上品。同時に独特の香り高さが印象深い、通好みの光りものです。その存在感はまるで高貴な女性のよう…。
美人薄命といいましょうか、鮮度が落ちやすく、特に黒い部分(腹腔膜)がすぐに傷んできます。この腹腔膜、鮮度が良いうちは外から見ると銀白色に見えますが、鮮度が落ちると焼けて茶色く見えるようになります。鮮度の良いものは、針のように長い下顎が赤いのだが、はてさて、この長いクチバシのような下顎にはどんな機能があるのでしょう?
針のような下顎の機能はよく分かりませんが、細身で流線型のサヨリは群れをなしてすごいスピードで泳ぎ、危険が迫ると、空中にジャンプして敵から身を守るらしい。(逃げ足速し!)
市場や釣りの世界では、小型のものは「エンピツ(鉛筆)」大型のものは「カンヌキ(閂)」と呼ばれています。大きさによる味の違いはさほどありません。
食べ方は、寿司、天ぷらが定番。刺身は昆布締め・酢締めにしても。長い身を結んで椀種として用いられる他、干物にされることもあります。高価ではありますがその価値がある味わいですので、サヨリを食べて日本の春を感じてみてはいかがでしょうか。